君のとなり。
「『嫌われたくない。そう思うあまりに
びくびくと1人寒さに震える夜を
幾度となく過ごした。嫌われたくない、
その一心で必死に耳を塞いでばかりの
自分だった。』だね、今の春瀬は。」

鳴海くんが言った言葉に驚く。

「『必死で耳を塞いで走る。すべての音を
閉ざしたはずなのに、隙間からはやはり
迫り来る明日の足音が聞こえていた。』...
確かここのフレーズって、
瀬崎汐さんの『明日が聞こえる』
っていう小説にあるセリフ...。」

私が呟くと鳴海くんはそれをうけて
嬉しそうに口を開いた。

「さすが。春瀬なら知ってると思ったよ。
昔、俺もページが擦りきれるんじゃないか
って思うくらいこの本を読んでたんだ。」

『明日が聞こえる』という物語は、
少し前に映画化とテレビアニメ化も
きまった今をトキメク話題作だ。
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