美髪のシンデレラ～眼鏡王子は狙った獲物は逃がさない～

何とはなしにインターネットの検索エンジンを開く。

友達のいない瑠花は、間違いなくスマホ依存と言えるだろう。

ＳＮＳは発信することはなく、もっぱら見ているだけだが、流行や最新情報から遅れたくはないという現代っ子らしい感情も捨てきれない。

瑠花はそんな自分を鼻で笑いながら、何となく゛美髪゛という検索ワードを入力していた。

スルスルと画面をスクロールする。

その中でひときわ目を引いたのが、将来、瑠花が勤務することになる゛Hozumi Soins des cheveux Co.ltd
（穂積ソワン デ シュヴ株式会社）゛の宣伝バナーであった。

゛あなたのその髪が世界を輝かせる゛

数年来変わらないキャッチフレーズ。

瑠花が初めてその会社のＣＭを見たのは小学校５年生の時だった。

女性の背中にかかる黒髪が風に揺れる。

光に照らされて艶々と煌めく。

その瞬間、彼女が世界の中心にいるように見えた・・・。

その時からずっと瑠花は穂積のヘアケア商品を使っている。

そのお陰でずっとこの綺麗な髪を保てている。

お陰で初めて会った生徒に髪を誉められたのだ。

瑠花は感謝の気持ちなのか、純粋な興味なのかわからなかったが、熱心に穂積ソワンデジュブのホームページを読みあさった。

この時から、瑠花は更にヘアケア商品に夢中になったと言っても過言ではないだろう。

世界ではなく、暗闇の中に沈んでいた瑠花を一瞬でも輝かせてくれた穂積ソワンデジュブの商品。

間違いなく、瑠花はこの日、転機を迎えていた。