美髪のシンデレラ~眼鏡王子は狙った獲物は逃がさない~
「お母さん、これ、提出書類ね。それと、明日なんだけど、私、Dシティに行ってくるから」

学校に提出する書類を持ってきた瑠花は、リビングにいたマリアにそう声をかけた。

「え?瑠花ちゃん、一人で行くの?」

母親であるマリアが驚くのは無理もない。

何せ、学校以外は引きこもりの瑠花が、自分から外出すると言ったのは初めてのことなのだから。

「うん。明日はカラコンをつけていくから大丈夫だと思う」

まだオッドアイのコンプレックスから抜け出せてはいないのだと、マリアは悲しくなったが、瑠花が外の世界に目を向け前進したことには変わりない。

「ママも行くわ、いえ、行かせて頂戴」

マリアが喜び勇んで娘との外出に張り切るのは必然だった。

「それで?何をしたいの?お買い物?それとも映画鑑賞?」

「ううん、ヘアケア教室への参加だよ。昼から三時間だって」

瑠花はマリアにスマホに表示された画面を見せた。

ヘアケア講座に頭皮診断、髪質に合った商品の説明とヘアケアコスメのサンプル提供などなど。

ソワンデジュブ商品マニアの瑠花にはたまらない内容。

マリアは笑って、瑠花と明日のスケジュールを打合せした。


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