美髪のシンデレラ~眼鏡王子は狙った獲物は逃がさない~
「それで?穂積堂を出てから何があった?」

時は21時。

瑠花は朔也に連れてきてもらった2件目のbarで完全に酔っぱらいと化していた。

一件目はおしゃれなフレンチレストラン。

御曹司朔也に似合わないあのスポーティーな四駆車に半ば強引に押し込まれたかと思うと、車はいつの間にか首都高にのっていた。

心晴という彼女、もとい婚約者を差し置いて、今日も朔也の車の助手席を陣取っている瑠花はどれだけ悪どいビッチなのだろうか・・・。

瑠花は居たたまれない感情と同時に、嬉しいという気持ちも否定できないでいた。

沈黙の中、車は夜の首都高をひた走る。

「とりあえず食え。土曜日からろくなものを食べていないんだろう?顔色が最悪だ」

゛アラサーに向かって顔色が最悪とはお前こそ言動が最悪だ゛

と瑠花は思ったが、確かにろくなもの、というか、飲み物しか口にしていないことに気付いて我にかえった。。

土曜日のランチにガッツリとしたアメリカンハンバーガーセットを食べたのが幸いしたのか、日曜の夕方まで寝倒し飲まず食わず。

狭間の連絡を受けて会社に行ってからは、明け方まで仕事をして、ほんの少し仮眠を取っただけでひたすら仕事に没頭していた。

その間食事をした覚えはない。

瑠花はそう自覚した途端にお腹が空くのを感じて赤くなった。

しかし、

目の前に並べられる美しい料理を見ているだけでも、御曹司朔也との違いを感じて悲しくなる。

ただのしがない一社員(召し使い)と、将来会社(国)を背負って立つ御曹司(王子様)。

瑠花は簡単なお礼を述べると、もう二度と朔也と一緒に食べることはないであろう゛最後の晩餐゛を楽しもうと開き直ることにした。

現代の召し使いは自分の意思で進退を決定することができる尊い存在なのだ。

そう自分に言い聞かせると、瑠花は罠とも知らずに、朔也に進められるままワインを手に取った。

それが一次会?の概要、そして罠の始まり、物語の序章である。
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