美髪のシンデレラ~眼鏡王子は狙った獲物は逃がさない~
翌日、瑠花はマリアとDシティの一角に来ていた。

穂積ソワンデジュヴは都心に本社、主要都市のシティモールやショッピングエリアにテナントとして出店もしていた。

瑠花はブラウンのカラコンをつけ、背中まで伸びる髪はおろしたままのスタイルでマリアと目的地に出向いた。

教室への申し込みはネットで済ませている。

教室前日ではあったが、急なキャンセルが出たとかで参加者に空きが出ていたのは幸いだった。

初めてのカラコン。

予想通り、瑠花の目に注目する人は誰もいなかったが、隣を歩くマリアは゛ザ外国人゛の容姿をしている。

連れだって歩いて目立たないわけはなかった。

ずっと引きこもりを続けていた瑠花は、ほとんど両親と出歩くことはなかった。

だから、マリアと並んで歩くだけでもこれほどに視線を集めるのだということは盲点だった。

瑠花は気がつくと立ち止まり、マリアをじっと見つめていた。

「どうしたの?瑠花ちゃん。気分悪い?」

「・・・ねえ、お母さんは日本に来て後悔したことはないの?外国人だからってジロジロ見られたりするのは嫌じゃないの?」

瑠花の質問に、一瞬キョトンとしたマリアだったが、直ぐに真剣な顔をして

「言葉と生活習慣の違いには正直困ったけど、ジロジロ見られて嫌だとは思ったことはないわ」

と笑った。

マリアの表情から嘘はついていないように見える。

「だって77億人の人間がいるのよ?みんな一緒なわけはないでしょ?それにこの容姿だからこそ得したこともあるの。注目されなければ興味も持ってもらえない。興味を持ってくれる人を大事にしてきたから今がある」

そうやって笑う母は凛としてカッコ良かった。
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