美髪のシンデレラ~眼鏡王子は狙った獲物は逃がさない~
『飲ませたらいいよ』

雅樹の助言は実に的確で効果的だった。

寝込みを襲えば犯罪だが、素直になって多弁になり、それなりの判断能力が損なわれていない状態で口説くのなら問題はない。

お酒は理性の箍を外す。

普段の瑠花も可愛いが、酔った瑠花は素直で従順で更に魅力を増した。

聞けば、ミカも元カレとは名ばかりで、彼女はまだ誰にも汚されていなかった。

できればファーストキスの相手にもなりたかったがそこまで望んだらバチが当たる(騙し討ちしたミカは許さないが)だろう。

しかし、彼女はモテる。

ミカや但馬だけではなく、社内外に彼女のファンだという人物はいるのだ。

これまでは但馬が何らかの牽制をかけて瑠花に近づかせないようにしていたようだ。

異動させた朔也をさぞかし恨んでいることだろう。

瑠花に自ら朔也との距離をとらせ、その間に自分の意のままにしようとしていた魂胆は見え見えだったが、瑠花はその上をいく対抗手段で打って出た。

賢い瑠花、可愛い瑠花。

12年間の想いを伝え、彼女の想いも知り、幸せの絶頂だと思いたかったが、まだ彼女の全てを手に入れたわけではない。

狭間グループ(狭間、但馬、副社長夫人のグループ、朔也が勝手に命名)が、『朔也の婚約者は心晴だ』と瑠花を洗脳していたとは知らなかった。

早期に誤解を解くことができて幸いだったが。

瑠花の頑なでどこか遠慮がちな態度の原因がわかった。

こうなると心だけでなく、身体まで陥落したい。

彼女を狙う輩は今後、どんな卑劣な手を使ってくるかわからないからだ。

だが、身体だけが欲しいわけではない。

心も手に入れなければ彼女を深く傷つけてしまう。

葛藤する朔也の気持ちを、瑠花は優しく汲み取ってくれた。
< 135 / 164 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop