美髪のシンデレラ~眼鏡王子は狙った獲物は逃がさない~
「狭間部長と但馬課長が退職する件については正直ホッとしました。よく本当のことを話しましたね?」

瑠花には、但馬が狭間や瑠花のことをラッキーアイテム扱いしていたことなどは話していない。

もちろんオッドアイのマンチカンを巡って朔也と一悶着あったことも知らせていない。

どんな形であれ、たとえそれが嫌悪感であったとしても、瑠花の心に但馬の思い出が深く刻まれるのは我慢がならないからだ。

゛あんな男は最初から存在しなかったと思う位で調度いい゛

朔也の独占欲、いや瑠花への執着は、もしかしたら但馬以上かもしれない。

「おや、穂積部長、やはりここにいらしたのですね」

二人の会話を中断するように、研究室に入ってきた雅樹が眉間にシワを寄せながら慇懃無礼に言った。

「朔也、あんな面白い茶番の席に、何故俺を呼ばなかった」

楽しいこと、下世話なことが大好きな雅樹は、朔也一人で本社に出向き、大捕物劇をやってのけたことを良くは思っていないらしい。

「ああ、すまなかったな。お前にはこっちのゴタゴタを解決してもらわなければならなかったからな」

但馬が瑠花に見せたロイヤルシャボン社のインターネット広告は自作自演だった。

調査の結果、ロイヤルシャボン社からそのような新商品の発売予定もなく、情報はリークされていなかった。

あくまでも、瑠花を朔也から引き離すためだけの一時的な対策だったのだろう。

そのせいで、瑠花の退職騒ぎともう一つの新商品開発に繋がったのだが、但馬にとっても予想外のことだだったに違いない。

「それで、瑠花は未だに何をしているんだ?退職届を出す原因は排除してやったと思っているんだが・・・」

朔也が研究室を訪れた時も、まだ研究室の片付けをしている瑠花に、朔也は不満げな気持ちを隠せずにいたのだ。

「そうだよ。瑠花ちゃんは結果的にもう一つの新商品を開発する功績をあげたわけだし、不快な思いはしただろうけど穂積ソワンデシュヴを辞める必要はなくなったはずだよね?」

イケメン部長と課長に詰め寄られても、瑠花は動揺することなく淡々と、

「いえ、武士に二言はありません。今回の騒動に巻き込まれたのは、自社の製品の売り込みや営業に力を入れてこようとしなかった私の意識の低さにもあります。これからは1消費者として、穂積ソワンデシュヴを支えていけたらと・・・・」

と言った。
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