美髪のシンデレラ~眼鏡王子は狙った獲物は逃がさない~
実はこの一ヶ月間で色々なことがあった。

朔也の両親と顔合わせをし、瑠花の緊張とは裏腹に、朔也とのお付き合いを快く受け入れてくれてホッとしたのも束の間。

朔也のマンションへの引っ越しを無理やり承諾させられ、あれよあれよという間に同棲が始まった。

会社でも、自宅でもベッタリと寄り添ってくる朔也に多少うんざりとしながらも、瑠花は幸せな日々を噛み締めていた。

゛こうしてゆっくり愛を育んで行こう゛

と、決意も新たにした矢先に、この朔也のやらかし具合である。

呆れてものも言えない。

どうにも受け入れがたい瑠花の気持ちも慮(おもんばか)ってほしいものだ。

瑠花の父によると、朔也は瑠花には出張と偽って、瑠花の両親が赴任するイギリスに一人で押し掛け、瑠花との結婚の承諾を得てきたらしい。

突然の結婚式と新商品の発売イベントの抱きあわせも朔也の発案。

瑠花以外の穂積ソワンデシュヴの社員、および穂積家、三神家一丸となって準備に精を出していたのだ。

ご苦労なことである。

厳かなパイプオルガンが教会音楽を奏でる中、瑠花は父に手を引かれて真っ青なバージンロードをゆっくりと歩いていく。

赤でもない白でもないバージンロードは、瑠花のブルーグレイの瞳と、新商品のボトルの色にちなんでいる、らしい。

後方には集まったマスコミやイベントの招待客が座っており、前方には穂積家と三神家の面々、雅樹に心晴、藤川係長ら会社関係者も座っていた。

もちろん、親友のエマも参加してくれている。

ただ、ミカだけは仕事の都合がつかずに欠席となった。

あのときのミカの告白が本心だったのか、瑠花には未だに判断がつかない。

でも

「おめでとう、瑠花。でも、誰がなんと言おうと俺がお前の初彼でファーストキスの相手だ。それだけは変わらない事実だと旦那に言っとけ」

と、電話越しに言って笑ったミカとはずっと友達でいたいけど、たぶん、朔也は許さないだろう、いや、絶対に。

そんなことを考えなからも、瑠花はゆっくりと、ゆっくりと歩みを進めて行く・・・。

そこには、堂々としかもバックライトに照らされて神々しく輝く、瑠花だけの王子様が立っていた。
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