美髪のシンデレラ~眼鏡王子は狙った獲物は逃がさない~
「み、三神君がしっかり説明しないから、穂積部長に何も伝わっていないではないか!もっと簡潔にわかりやすく説明したまえ」

こうして狭間が慌てて瑠花に説明を押し付けてくるのはいつものこと。

瑠花が苦笑して、口を開こうとした刹那、

「誰が三神主任に説明させろと言いましたか?私はあなたに聞いているのです。狭間部長」

と、穂積が間髪いれずに、狭間を追い込んできた。

ぐぅっ、と煮え湯を飲む狭間。

瑠花だって、狭間がヘアケア製品の成分の何たるかを全く理解していないことなど初めからわかっている。

だが、それでも狭間は話術が得意で知ったかぶりをかますくらいには表面を取り繕うことができる。

そのコミュニケーション能力と面の皮の厚さは瑠花の数倍上をいく。

だからこそ、瑠花は日陰の功労者に徹し、狭間を表舞台に立たせることでそれなりの利益を得てきた。

本当はお互い様なのだ。

瑠花はずっと部長のあさましさには目をつぶって研究に専念してきたのだから。
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