美髪のシンデレラ~眼鏡王子は狙った獲物は逃がさない~
「今頃、うまいこと穂積部長があの禿げ狸を追い込んでることだろう。瑠花ちゃんはこれを機に、堂々と表の功労者として光の道を歩きなさい」

瑠花も恨んでいるに違いないと決めつける橋沼の言動に、

゛そんなことは望んでない!゛

と、瑠花が言葉を繋ごうとした時、

「橋沼課長、それ以上、三神主任に近づくならあなたもクレーム対策部門に左遷しますよ」

と、テノールのイケメンボイスでパワハラ発言を口にする穂積が、音もたてずに会議室に戻ってきたのがわかった。

「・・・自由か!」

冗談とも捉え難い穂積の発言に、橋沼は肩をすくめて突っ込みをいれる。

朝から感じていたことだが、この冷徹イケメン眼鏡王子、仕事中とのギャップが大きすぎる。

冷徹、冷静、ロボットのような抑揚のない口調。

会議上での怒濤の攻めツッコミ役から一転、リラックスした穂積は橋沼からのツッコミにすら反応しない完全なるボケ役に徹していた。

言葉の端々に見え隠れする、まるで瑠花と近距離にいる橋沼に嫉妬しているかのような言動。

自覚がないのか、TL小説に出てくるような

゛ツンツンからの甘やかしワード゛

を惜しげもなく混ぜ混んでくる穂積。

゛こんな俺様御曹司は好きになれない゛

そんな一方的な認定をかましたはずの瑠花は、初対面のはずの、噂とあまりにも違う穂積に、今後も翻弄される予感を感じて震え上がった。
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