美髪のシンデレラ~眼鏡王子は狙った獲物は逃がさない~
朔也の読みはいい線まで行っていた・・・。

そう、いい線まで行っていたのに、運命の女神は朔也に微笑まなかった。

朔也の入社から4年後、2人の出会いから数えて7年が経過した時、美髪の少女・三神瑠花はこっそりとひっそりと穂積ソワンデジュブに入社していた。

しかし、

その1年前に、朔也はフランスに赴任してしまい、慣れないフランス語と異国の環境に悪戦苦闘していたのである。

この間は、日本の本社に気を配る余裕なんて全くなかった。

ヘアケア商品開発の先進国であるフランス支社への赴任は、将来、会社を背負って立つ後継者に課せられた必須の課題でもあった。

赴任したら3年間は帰れない。

初めからわかっていたことではあったため朔也も諦めはついていた。

名前も知らない美髪の少女とは、再会したとしてもこうして一時的にでも離れてしまう運命にあったのだ。

朔也はフランスで一心不乱に仕事に打ち込んだ。

同じ時期に、将来の幹部候補である戦友とも言うべき悪友、橋沼雅樹が一緒にフランスに赴任したことで気も紛れていた。

だが、そのために朔也が瑠花の存在に気づくのが遅れたことも事実。

商品開発部しかも研究開発課という陸の孤島に閉じ籠められたシンデレラを見つけ出すのに、帰国後更に2年の月日を要することを、当時の朔也は知る由もなかった。
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