美髪のシンデレラ~眼鏡王子は狙った獲物は逃がさない~
狸と爬虫類
「わ、私はアプリコットとダマスクスローズの香りが好きです。髪の手触りにこだわるためには美容成分や植物エキスが重要で・・・」
朔也が過去に思いを馳せている間に、瑠花は嬉しそうに商品への思い入れを語る。
彼女が12年前と同じ愛情を持って穂積堂で仕事をしていたことは手に取るように伝わってきた。
何より、朔也がずっと恋い焦がれていた弾けるようなあの笑顔。
朔也は思わず抱き締めたくて近づきそうになったが、それを実行してしまってはただのセクハラになる。
ここまで探し続けて、ケダモノ認定されるわけにはいかないのである。
ジワジワと囲い込んで、手中に収めなければならない。
「君の気持ちは理解した。フランスにいた頃の知り合いが新宿でアロマオイルや植物エキスを取り扱っている。明日の朝イチで君の希望に添うものを届けさせるよう手配しよう。だから今日は残業せずに帰りなさい。これは命令だ」
朔也の厳しい視線に瑠花は目を逸らせる。
「追加の原料の手配については有難い限りですが、残業の件はまた別の話で・・・」
「いや、穂積部長の言う通りだ。昨日も深夜まで残業していただろう?直属の上司の俺も黙認できないな」
いつの間にか部屋に入ってきて、ニヤニヤと二人の様子を眺めていたらしい橋沼が、追い立てるように穂積の援護にまわった。
「橋沼課長・・・」
「今日は定時で帰りなさい。いいね」
「橋沼課長、邪魔するな」
何の邪魔なのか、いまいち瑠花にはわからなかったが、今までの上司達と違って、二人は完全に瑠花寄りの上司と言っても過言ではないだろう。
袋小路に入り込んでいた瑠花にとって、穂積の言葉は救いの一言だった。
疲れもピークに達しているのは確か。
今日はゆっくりやすんで、明日仕切り直すのも良いかもしれないと思った。
瑠花は素直に頷き、
「ありがとうございます。そうさせて頂きますね」
と微笑んだ。
朔也が過去に思いを馳せている間に、瑠花は嬉しそうに商品への思い入れを語る。
彼女が12年前と同じ愛情を持って穂積堂で仕事をしていたことは手に取るように伝わってきた。
何より、朔也がずっと恋い焦がれていた弾けるようなあの笑顔。
朔也は思わず抱き締めたくて近づきそうになったが、それを実行してしまってはただのセクハラになる。
ここまで探し続けて、ケダモノ認定されるわけにはいかないのである。
ジワジワと囲い込んで、手中に収めなければならない。
「君の気持ちは理解した。フランスにいた頃の知り合いが新宿でアロマオイルや植物エキスを取り扱っている。明日の朝イチで君の希望に添うものを届けさせるよう手配しよう。だから今日は残業せずに帰りなさい。これは命令だ」
朔也の厳しい視線に瑠花は目を逸らせる。
「追加の原料の手配については有難い限りですが、残業の件はまた別の話で・・・」
「いや、穂積部長の言う通りだ。昨日も深夜まで残業していただろう?直属の上司の俺も黙認できないな」
いつの間にか部屋に入ってきて、ニヤニヤと二人の様子を眺めていたらしい橋沼が、追い立てるように穂積の援護にまわった。
「橋沼課長・・・」
「今日は定時で帰りなさい。いいね」
「橋沼課長、邪魔するな」
何の邪魔なのか、いまいち瑠花にはわからなかったが、今までの上司達と違って、二人は完全に瑠花寄りの上司と言っても過言ではないだろう。
袋小路に入り込んでいた瑠花にとって、穂積の言葉は救いの一言だった。
疲れもピークに達しているのは確か。
今日はゆっくりやすんで、明日仕切り直すのも良いかもしれないと思った。
瑠花は素直に頷き、
「ありがとうございます。そうさせて頂きますね」
と微笑んだ。