美髪のシンデレラ~眼鏡王子は狙った獲物は逃がさない~
「ごめんなさい。仕事ができない私のせいでみんなにも無理をさせてしまって・・・」

「違います!三神主任は悪くありません。全部、狭間部長のせいで・・・」

いいよどむ行村の言葉を遮って、

「朝から賑やかだな。いつからここは動物園になったんだ?」

朝から聞きたくはない冷たい声がフロアに響き渡った。

シュンとする瑠花を励まそうと、数人の男性スタッフが集まってきたところに、穂積が入り口から入ってきたのだ。

その目は相変わらず冷淡に眼鏡の奥で光っていた。

「三神主任、早速だが、頼んでいたオーガニックオイルとアミノ酸系の洗浄剤がもうまもなく届く予定だ。受け取りを頼む」

「えっ?そんなに早く届くんですか?ありがたい・・・」

笑みを浮かべる瑠花に、穂積が満足そうに頷く。

「お礼は結果を出してからでいい」

「お前、言い方・・・」

元も子もない言い様に、橋沼が間に入ろうとするが、

「ご期待に添えるように頑張ります」

と、その意に反して瑠花は元気よく返事をした。

「三神主任、良かったですね!俺も手伝います・・・」

「行村、君にはやりかけの仕事があるだろう?それとも何か?まだまだ人を思いやる余裕があるのか?それなら・・・」

目を輝かせる瑠花の手伝いをしようと意気込んだ行村を、穂積が容赦なくブッタ切った。

「いえ、余裕なんてこれっぽっちもありません。マイロード」

「俺はお前の主人になった覚えはない。さっさと仕事を片付けろ」

「イエス、サー!」

軍隊ものやファンタジー系のゲームオタクである行村は、返事の仕方が独特である。

しかし、瑠花はこれから手に入る予定の品々に思いを馳せて、行村や朔也を相手にするどころではない。

スイッチの入った状態の主任が、しばらくは自分の世界に入ってしまうとこちらの世界に帰ってこないと知っているスタッフ達は、苦笑いしながら自らの仕事に取りかかり始めた。

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