美髪のシンデレラ~眼鏡王子は狙った獲物は逃がさない~
出来上がったシャンプー、コンディショナーは幹部会参加者全員の満場一致で販売へのゴーサインが出た。

ほんのり薫るアプリコットとダマスクスローズの香り。

ダメージケアをうたったアミノ酸系オーガニックシャンプーだが、指通りとさっぱり感を諦めない本格的なヘアケア商品。

とはいえ、価格は高すぎず安すぎずが基本だ。

働き盛りの20代から30代の女性にはちょっとした自分へのご褒美と思える高級感を意識した商品を目指した。

満面の笑みで商品説明を行い、自らの髪を使って使い心地を説明するレアな瑠花の姿に、幹部会のおじさま方も大いに満足を示した。

ただ狭間と但馬だけは、終始おもしろくなさそうな顔をしていたが、開発当初に少しだけ関わりを持っていたこともあり、さほど文句をつけられることがなかったのは幸いだった。

開発期日まで2日を残し、ようやく完成にこぎ着けたヘアケア商品は、容器の形とパッケージデザインを決めてから宣伝広報課と営業部に引き渡されることになる。

瑠花の担当はあくまでもヘアケア商品の゛中身゛に関するものだけ。

デザインは別の担当者が担当する。

しかし、今回ばかりは瑠花も全ての工程に関わりたいと思っていた

それほどまでに満足のいく仕上がり。

瑠花は、新商品が幹部達に受け入れられたことに満足しつつも、心の中では残念に思っている部分もあった。

それは、自分の理想としたヘアケア商品を作るための全工程に関わりたいという思いが果たされないこと。

今後、これほどまでに満足のいく商品を作れるとは限らない。

今後も、同じように瑠花が理想とするヘアケア商品を開発するチャンスが同じように巡ってくるとも限らない。

しかし、その不確実な現状を受け入れるのもしがない雇われ研究員の運命。

瑠花は笑って新商品が自分の手から離れていくのを見送ろうと心に決めていた。

それが嫌なら独立するしか道はないのだから・・・。
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