美髪のシンデレラ~眼鏡王子は狙った獲物は逃がさない~
結局、その日は、それ以上但馬課長が瑠花に絡んでくることはなかった。

どうやら心晴がうまく取りなしてくれたらしい。

ホッとした瑠花は、この日も前日同様に定時で帰宅した。

そして、残る週末の木曜と金曜日。

2日間とも新商品のパッケージデザインに明け暮れて勤務時間は過ぎていった。

ラッキーなことに、穂積部長は週末の2日間共に本社での会議で不在。

土曜日の約束に関して、瑠花が朔也と話す機会は一度もなく、当の本人からも何の連絡もなかったことから、瑠花はこのままあの話はなかったことになるのだろうと期待していた。

何せ瑠花は朔也の連絡先を知らないし、こちらの番号も教えてはいないからだ。

世間は花の金曜日である今日、残り30分を乗り乗り切りさえすれば、自ずと約束は執行猶予終了時間を迎え、瑠花の幸せな週末は確約されるに違いない。

瑠花は祈るように、ただひたすらに時間が過ぎ去るのを待った。

しかし、そうは問屋が卸さないのが現実だ。

どこまでも周到で俺様な穂積朔也が、約束を違えるなどということは万が一にもありえないのだ。

瑠花がその事を理解できずにいたのは、ひとえに二人の付き合いの浅さが原因ではあったが、これから始まる濃度の濃い付き合いの序章としてはあまりにも打撃が大きかった。

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