美髪のシンデレラ~眼鏡王子は狙った獲物は逃がさない~
「こんにちは。穂積ソワンデシュヴ商品開発部、研究開発課で開発課主任をしております、三神瑠花です。この度は、新商品のお披露目イベントを穂積堂で開催して頂けるとお聞きしました。大変感謝しております」

瑠花の丁寧な挨拶に、湯川店長は微笑んで右手を差し出し、

「まあ!あなたが噂の三神主任?今度の新商品は朔也くんも・・・いえ、穂積部長も上役連中からも当社のイチオシだって聞いてるわ。こちらこそ、お披露目の場として当店を選んでいただけて光栄よ」

と、握手を求めてきた。


しかし、瑠花の右手はしっかりと朔也に繋がれており自由にならない。

「あのう、穂積部長・・・?」

「朔也だ」

朔也なんて呼んだこともないのに・・・と瑠花が混乱しているにも関わらず、

「あら、まあ、公私混同しちゃってる朔也くんなんて12年ぶりに見るわ・・・ってあなた、あのときの高校生じゃない?目の色は違うけど、この髪にその綺麗な顔。間違いないわ」

朔也の行動を見てクスクス笑っていた湯川が、突然瑠花に歩み寄り、その髪を撫で始めた。

「そうよ。この極上の手触りと艶。絶対にもう一度ご来店下さると思っていたのにどうして来てくれなかったの?私たちの教室運営に落ち度があったんじゃないかとどれだけ落ち込んだことか・・・」

あれだけ熱心に聴講し穂積ソワンデシュヴの商品愛を熱く語る少女に店側が次の来店を期待するのは無理もない。

瑠花は自分勝手な願掛けで店長らを落ち込ませる結果になっていたとは露知らず、申し訳ない気持ちでいっぱいになった。
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