美髪のシンデレラ~眼鏡王子は狙った獲物は逃がさない~
「悪いが電話が鳴った。少し外で話してくる」

突然のスマホの呼び出し音で、朔也は舌打ちをしながらも、電話の相手に対応することを決めたようで、忌々しげにイベントホールを出ていった。

瑠花は本当のことを話さずに済んでホッとしていたが、代わりに入ってきた湯川店長を見て体を硬直させた。

「話は聞いた?』

「いえ、急ぎの電話が入ったようで、すぐに部長は出ていかれましたので」

「そう、残念。当時の朔也くん、本当に可愛かったのよ」

肩を竦める湯川店長の手には、あの日と同じコーヒーショップのモカブレンドがあった。

「これ、あのときも講義の合間に頂きました。懐かしい・・・」

「あの時のラブちゃん、とても苦そうな顔をして飲んでいたでしょ?それに気づいた朔也くんが、すかさず私に進言してきて、それで私があなたにシュガーとミルクを差し出したの」

「穂積、部長が気づいてくれたんですか?」

「あの子が部長ねえ・・・私も年取るはずだわ。ただの無気力なバイト生だった朔也くんが今ではやる気に満ちた幹部候補だもの。長生きするものね」

「バイト生?」

どういうことだろう?

朔也は確かに参加者として瑠花の斜め後ろに座っていた。

何より参加記念品としてあのトライアルヘアケア商品をもらっていたではないか。

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