美髪のシンデレラ~眼鏡王子は狙った獲物は逃がさない~
「正規職員と違って、バイト生には教室などの小イベントではさせられることがないの。それにあの通りのやる気のなさだったでしょ?刺激を加えようと無理やり教室に参加させたのよ。そのお陰で今があるんだけどね」

そんな湯川店長の言葉で、あのやる気の無さそうなツンツンデレ甘イケメン王子が何故あの教室に参加していたのか、という最大の謎を解くことができた。

「でもね、あの子のやる気を引き出したのは、あの教室でも、私達スタッフでもなくて、ラブちゃんなのよ?」

大それた湯川の評価に、瑠花はブンブンと首を振って否定した。

「そんなはずはありません。何せ私はトライアル商品を部長からもらう瞬間まで話もしていなかったんですから」

そう、瑠花は教室に入った瞬間から、ずいぶんとイケメンな男性が座っているな、と思ってはいたが極度な人見知りおよびニートのため、そんな桁違いのイケメンとは目を合わせることすらできなかったのだ。

幸い、イケメンよりももっと魅力的な講義内容であったため、その存在を忘れることができるくらいの集中力を発揮していた。

教室が終わる頃には、すっかりイケメンの存在を忘れていて、声をかけられて二度ビックリしたほどだった。

「あなたのイキイキとした目と美しく磨きあげられた髪の美しさを見て、朔也くんは穂積の商品がどれだけ消費者に大きな影響を与えているのか実感できたと言ったわ。だからこそトライアル商品をあなたに渡した。ラブちゃんが穂積の商品を最も愛してくれているって思ったから」

またも知りたくない情報を知ってしまった。

朔也の気まぐれで瑠花にトライアル商品を渡したことにして欲しかった。

最早、真実なんて、瑠花を刺し殺す諸刃の刃でしかない。

「それにね、朔也くん、ずっとずっとラブちゃんを探し続けていたのよ?ガラスの靴どころか足跡も残さずに消えたお姫様なのにね」
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