美髪のシンデレラ~眼鏡王子は狙った獲物は逃がさない~
瑠花は、自分と同じように、宛もなく確約もない再会を朔也が望んでいてくれたことを知って心が沸き立つのを自覚した。

「12年よ?普通は諦めるわよね?でもそこが朔也くんのしつこい・・・失礼、凄いところなの。一途っていうか、なんというか・・・」

この信じがたい湯川の言葉を聞いたのが一週間前だったなら、例え彼が冷徹俺様イケメン眼鏡御曹司になっていたとはいえ、初恋の人の意外な側面を知ったことで瑠花も泣いて喜んだに違いない。

だが、すでに瑠花は、朔也には心晴という美しいお姫様が傍にいることを知ってしまった。

瑠花は決して人のものは欲しがらない。

ましてやそれが浮気や不倫に繋がるのならもっての他だ。

いくら初恋の人が言い寄って?きたからと言っても、その存在欲しさに信念を曲げる気も、改める気もない。

「そうですか・・・。ですが、私があの時の女子高校生だという事実を知っても部長は私にその事こと告げることなく今日まで黙っていました」

瑠花は気を取り直して、自分に言い聞かせるように頷きながら

「こうして穂積堂に私を連れてきて、真実を伝える、という最終目的を果すことができ、部長もきっと満足したことと思います。私も、ようやくこれまでの部長の奇行の原因がわかって納得しました」

と、形式ばった言葉で言った。

「えっ、なんだか、真実は何一つ伝わっていないような・・・。全く何やってんのよ、朔也くんは・・・!」

ブツブツと独り言を呟く湯川主任のため息は、自身の混乱を宥めようとする瑠花には少しも聞こえてはいなかった。
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