永久溺愛〜オトナの独占欲は危険です〜



「あっ…紘毅くん、お帰りなさい」
「ああ、ただいま。悪い、遅くな…」


紘毅くんは私を視界に入れるなり、口を閉じた。

そして“電話中だったのか”とでも言いたげな顔をして、静かにスーツを脱ぎ始めたのだ。


『本当に一緒に住んでるんだね』
「な、い、今更じゃないですか…!」

『何歳差だっけ?確か…八歳差か、八歳も歳上のオトコと二人暮らしなんて、あまり考えられないよね』

「わ、わざわざ言わなくてもわかってますよ…!」


この関係があまりにも不思議で、良くないことなんて。


『だから俺の家に来たらいいのに。
卒業するまでの間もさ』

「い、嫌ですからね!」
『“ヒロキくん”のことを忘れたいのに?』

「……っ」


ここでそれを言うか。
忘れたいけれど、それなら一人暮らしをした方が安全だ。


「さ、坂野先輩は危険人物ですからね!」
『手を出さないって約束しても?』

「信じられません」
『えー、ひどいなぁ』


スマホ越しに聞こえる微かな笑い声。
作り笑いに聞こえなくもない。

< 122 / 288 >

この作品をシェア

pagetop