永久溺愛〜オトナの独占欲は危険です〜
「あのっ…!」
雨音にかき消されそうなくらいの小さな声だったと思う。
それでも彼の耳には届いたようで、顔を上げた。
起きていたようだった。
「……君は」
「あ、えっと…大丈夫ですか…?」
なんとなく私のことを知っている様子で安心した。
ずっと鞄に入れてある折り畳み傘を取り出し、彼に差し出す。
「良かったらこれ、使ってください。
あと…」
雨を見越して用意していた大きめのタオルも取り出して彼に渡した。
「これも良かったら…!
風邪引くかもしれないんで」
「え、でもこれは君の…」
「家はすぐそこなんで…では失礼します!」
知らない人に自分から話しかけるのは相当な勇気がいるわけで、緊張しながらもその場を後にした。
けれどこの日の出来事がきっかけで───
恋が始まるなんて、誰が想像できただろうか。