初恋エモ
次のライブで、フロアの後方に穂波さんの姿を見つけた。
最初は腕組みをしてライブを見ていたけれど、次第に体を揺らして、拍手をして、ノリノリになっていく。
もうすぐ高校二年生。
クラス替えで離れれば話す機会はなくなるだろう。
でも、音楽でつながっていければ嬉しい。
「超カッコよかったです~! 彼女と別れたって本当ですか?」
まあ、ライブ後すぐ彼女は上目遣いでクノさんに突撃していったけれど。
しかも打ち上げにも出るらしい。これはクノさん大変だ。
そんな中、早々と葉山さんが帰る準備をしていた。
もう帰るんですか? と聞くと、彼は申し訳なさそうにこう答えた。
「ごめん。急遽スクリーミンズから呼び出しあって」
葉山さんは珍しく慌てている。どうしたんだろう。
その理由は嬉しいものだった。
「すごいですね! おめでとうございます!」
スクリーミンズは有名なインディーズレーベルから声をかけられていたらしい。
とうとうCD発売が決定したとのこと。
インディーズとはいえ有名バンドを輩出しているレーベル。しかも全国流通。すごいなぁ。
「曲作りやレコーディングが始まるから、『透明ガール』の方はちょっと活動抑えなきゃいけないかも。ごめん」
スタジオ練習後のミーティングで、葉山さんは私たちに頭を下げた。
私は、「いえいえ、嬉しい事じゃないですか!」とフォローするが、クノさんは複雑そうな様子。
そりゃそうか。
今は『透明ガール』でどんどん曲を作りライブもしている状態。
その頻度が減ってしまうことが決定したから。
しかし、葉山さんの提案によりすぐ機嫌が直った。
「『透明ガール』も曲増えてきたし、そろそろ音源作らない?」