初恋エモ
2
☆
レコーディングや新しい曲の準備をしているうちに、私は高校二年生に、クノさんは三年生になっていた。
CDは3曲入りのEP。これから手売りしていくことに。
リードトラックは『ブルー/イエロー』で、クノさんの叔父さんがライブ映像を編集したMVを作ってくれた。
「これ、私だってバレないでしょうか……」
「大丈夫でしょ。お前髪ぼさぼさで顔見えてないじゃん」
ぼさぼさって。
ライブ中は三つ編みほどけって言ったのはクノさんですからね!
MVを動画サイトにアップロードし、SNSで広報する。
たくさんの人に届けばいいな。
「あ、ミハラさんが見てくれたみたいです」
すぐにミハラさんから「めちゃくちゃかっこいい! 今度CD買うね」とラインが来た。
パソコンをいじっているクノさんは「ふーん」とそっけない返事をしてから、
「お前、ミハラとどーなってんの?」と聞いてきた。
「ええっ? どうって、どうも……その」
突然の問いにビビって何も答えられなくなる私。
すかさずクノさんはギロリと鋭い目を私に向ける。
「優しい、先輩だと思います」
「で?」
「私にはとうてい手の届かない存在っていうか」
「で?」
「あと、バンドやバイトで忙しいですし」
「だから?」
言葉をにごし続けてもクノさんは逃してくれない。