初恋エモ
3
☆
「なんかいつもと客層違いますね。しかも満員じゃないすか?」
今日は都会のライブハウスへの遠征ライブ。
私たちの出番は三番目。トリには人気バンドが出るらしく、そのお客さんがフロアを埋め尽くしていた。
アウェーでの環境に緊張したものの、ところどころにいつものお客さんの姿が見えて安心する。
「しゃ、客奪い取るぞ!」「おー!」
葉山さんが忙しいため、満足にスタジオ練習ができないまま今日を迎えた。
でもきっと大丈夫だ。円陣を組んで、いつも以上に気合を入れた。
ライブの出来は悪くなかった。
演奏もかちっと合ったし、クノさんの声もよく出ている。
ただ、ボーカルかっこよくない? あれスクリーミンズのドラムらしいよ、という声も聞こえたものの。
私たちを知っているお客さんが少ないからか、いつもよりフロアからの手が挙がらない。
知名度の少なさと実力不足を感じて、悔しかった。
ライブ後、物販席で一人凹んでいると。
「音源買うわ」
「ひいっ!?」
怖そうなお兄さんが目の前にいたため、変な声を出してしまった。
短髪にキャップ、ダボッとした服装。顔はかっこいいけれど目つきが怖く、妙な迫力があった。
お金を受け取り、CDを渡すと、
「いつからやってんの? 高校生?」
と、ぶっきらぼうな口調で話しかけられた。
「あ、3人中2人は高校生です。バンドは去年の夏くらいからです」
「へー。その割には結構やるじゃん」
なんだか上から目線なお兄さんだったな。
ほめてくれて嬉しかったけれど。
そう思いながら、他のライブをぼけーっと眺め、次がラスト。