初恋エモ
2
☆
クノさんとの遭遇事件からは、しばらく平和な日々を送っていた。
休みの日は中学時代の友達と遊べたし、高校と家の中間地点にあるスーパーマーケットでのアルバイトも決まった。
高校生活を楽しめる余裕はまだない。
ただ、穂波さんから掃除当番を変わって、とか、宿題見せて、とかお願いされて、引き受けたり。喜んでもらえたり。
それなりに頑張って上手くやっていけていると思う。
しかし、一週間ほど経った頃、突然嵐がやってきた。
「ちょっ、あんた、あの時の!」
放課後。下駄箱に向かう途中で、いつぞやのウェーブ美人女子とすれ違った。
軽く会釈をして、通り過ぎようとしたが絡まれてしまった。
「は、はいっ」
「クノとマジで付き合ってんの?」
先輩は眉間にしわを寄せ、私に顔を近づける。
嘘ではないかと疑っている様子で。
「えっと……」
どどどどうしよう。
すぐ否定していいものだろうか。
あの時、クノさんに「協力して」って言われて頷いちゃったし。
私がただの通りすがりであることを伝えたら、絶対話がややこしくなる。
でも本当は付き合っていない。
ていうか、クノさんすぐ無かったことにしてくれるって言ったじゃん!