初恋エモ


家に帰る時間になり、STARFISHのメンバーと連絡先を交換し、ライブハウスを出た。

怖いギターさんはクノさんを気に入ったようで、今度遊ぼうぜ~と彼に手を振った。

色々あったけれど、新しい出会いもあったからまあいっか。


葉山さんは打ち上げに残っているため、クノさんと電車に乗り地元へ。


ドアに寄りかかり景色を眺めるクノさんは、黙り込んだまま。

地元に近づくにつれ、窓の外の灯りが減り、暗闇になっていく。


「……あの、今日は色々ありましたが楽しかったですね」


気まずい空気が流れているため、あえて声をかけてみた。


すると、「ごめん」とか細い声で謝られた。


「いやいや大した事ないですよ!」

「普通、男が女を守るもんじゃん。なのに逆に俺がかばわれて、お前にケガさせて。だせぇなーって」


今さら何を言っているんですか。

しかも私クノさんから女の子扱いされたことありませんよ?


とは言わないでおいた。

ガチで凹んでいるみたいだったから。


だけど、彼は勘違いをしている。

私はクノさんを守りたかったわけじゃない。


「ケンカを止めようとしたのは、クノさんのためじゃありません」

「ん?」

「自分のためです」


クノさんの正面に立ち、ベースケースの太い肩ひもをぎゅっと握った。


「もし警察を呼ばれでもしたら、私がバンドやってること母にバレて、辞めさせられると思ったからです」

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