初恋エモ


ただ、もちろん目下の問題は……ドラマー探し!


「じゃあ、また連絡しますね」

「え、俺イマイチだった?」

「じゃなくて、他にもやりたいって言ってくれる人がいるので、できれば比較してから決めたいなぁって」

「ちっ」


ちょっと、この人舌打ちした! なんか嫌な感じ!


クノさんには聞こえてないよね……?


恐る恐る振り返った、その瞬間。

どかん、という音とともに、机が吹っ飛んでいた。


「オイてめぇ、たいしたドラム叩けねーくせに調子乗ってんじゃねーよ!」


机を蹴り飛ばし、つかみかかろうとするクノさんを必死に止めるハメに。

やめてやめて! 穏便に!


「はぁ、なかなかいい人いないですね」


机を元に戻し、ため息をつく。

結局、さっきの人は逆切れして帰っていった。

まあ確かにドラムの腕も態度もイマイチだったから、別にいいんだけど。


透明ガール、ドラム募集中。


SNSで募集を出したところ、拡散され、やってみたいという人から連絡があった。

しかし、葉山さんの上手いドラムに慣れているせいか、スタジオで合わせてもしっくりこない。


「いいバンドや解散したバンドからスカウトするしかねーかなー」


透明ガールで作ったつながりを駆使して探してはいるものの、良さげな人はいない。


ちなみにこの前のライブは、前に私を殴ったあのバンドマンがサポートで入ってくれた。

割と腕は良かったけれど、彼は今、大学四年生。

卒業研究で忙しく、スケジュールを合わせるのが難しかった。


< 132 / 183 >

この作品をシェア

pagetop