初恋エモ
ただ、もちろん目下の問題は……ドラマー探し!
「じゃあ、また連絡しますね」
「え、俺イマイチだった?」
「じゃなくて、他にもやりたいって言ってくれる人がいるので、できれば比較してから決めたいなぁって」
「ちっ」
ちょっと、この人舌打ちした! なんか嫌な感じ!
クノさんには聞こえてないよね……?
恐る恐る振り返った、その瞬間。
どかん、という音とともに、机が吹っ飛んでいた。
「オイてめぇ、たいしたドラム叩けねーくせに調子乗ってんじゃねーよ!」
机を蹴り飛ばし、つかみかかろうとするクノさんを必死に止めるハメに。
やめてやめて! 穏便に!
「はぁ、なかなかいい人いないですね」
机を元に戻し、ため息をつく。
結局、さっきの人は逆切れして帰っていった。
まあ確かにドラムの腕も態度もイマイチだったから、別にいいんだけど。
透明ガール、ドラム募集中。
SNSで募集を出したところ、拡散され、やってみたいという人から連絡があった。
しかし、葉山さんの上手いドラムに慣れているせいか、スタジオで合わせてもしっくりこない。
「いいバンドや解散したバンドからスカウトするしかねーかなー」
透明ガールで作ったつながりを駆使して探してはいるものの、良さげな人はいない。
ちなみにこの前のライブは、前に私を殴ったあのバンドマンがサポートで入ってくれた。
割と腕は良かったけれど、彼は今、大学四年生。
卒業研究で忙しく、スケジュールを合わせるのが難しかった。