初恋エモ
でも今はバンドが大変な状態。付き合うとか考えられないよ。
しかも私、彼氏なんて中一の時に可愛いお付き合いしかしたことないし、キスとか、その先とか、そういうのは想像できないって!
ばくばくと鼓動が早くなる。
「美透ちゃん、俺……」
ミハラさんは真っすぐに私を見すえた。
こういう時ってどうすればいいの? ちゃんと聞かなきゃ失礼だよね?
「は、はい」
頑張って平静をよそおい、彼の言葉を待つ。
「す……」
「す……?」
まさか、本当に私を好き……?
と、一人舞い上がっていた私は、この後ミハラさんから発された言葉を理解しきれず、完全なるフリーズ状態へ突入した。
「すごいなって、尊敬してた。美透ちゃんのことも、クノのことも。今までの俺の人生って、何でも上手くやってきたけど、思い返せば何にも成し遂げてなかった。
そんな自分じゃダメだってずっと思ってた。でも、バスケも受験のためとか言って、最後の大会の直前で辞めて、今も勉強はしてるけど、結局、行けそうな大学を志望してる自分がいて……」
ここまでミハラさんが話し終えた時、ドーン! とすごい音とともに扉が開かれた。
「あーなげぇ、なげーんだよ!」
大きな足音を鳴らし、クノさんが部屋へ入り込んできた。
バイトが終わったらしい。もうこんな時間か。
「で?」
クノさんは、私たちのすぐそばにドカッと座り、ミハラさんをにらみつけた。
「…………い」
「は!?」
相変わらずクノさんは声がでかい。
ミハラさんがせっかく話そうとしたのに、キーンという雑音が耳にこだまする。
その音が落ち着いた頃、ようやくミハラさんは声を張った。
「俺に透明ガールのドラム、やらせてほしい」