初恋エモ
ミハラさんは予備校があるため、スタジオ終了後すぐ出て行った。
私とクノさんはミーティングスペースに残り、少し話をすることに。
「なにも、あんな言い方しなくても……」
正直、ミハラさんは憧れの先輩だ。
私はひいき目で見ているのかもしれない。
でも、想像以上に彼はドラムを叩けていた。
「…………」
クノさんは無言のまま、私にスマホを差し出した。
「え。え。ええええええっ!?」
立ち上がると同時に椅子が後ろへ吹っ飛び、けたたましい音があがる。
構わず私はその画面――コンテストの二次審査の結果発表ページに焦点を集中させた。
じわじわ投票数を伸ばした透明ガールは、なんと……なんと……最終選考へコマを進めることに!
「どうしましょう! これマジでやばいですよ!」
あわあわと右へ左へ高速移動を繰り返す私。
対するクノさんは、「投票順位から予想できただろ」と冷静だ。
感動のあまり、涙が出そうになった。
あの音楽が大好きな人が数万も集まる幸せな空間で、私たちはステージに立てるかもしれない。
たくさんの人に透明ガールを知ってもらって、曲を聴いてもらって、全国でライブができるようになるかもしれない。
本当に、音楽で生きていけるかもしれない。
クノさんと一緒に。