初恋エモ
4
☆
スタジオでクノさんと音を合わせてから、ミハラさんが通っている予備校へ向かった。
自動ドアが開くたびに、いろんな制服の生徒が出てくる。
みんな頭がいい人そうに見えた。
大学に行って将来ちゃんとした社会人になる人たちなんだ、きっと。
「そういえば、クノさんって成績どうなんですか?」
「一応、卒業できる程度にはやってる」
私は「へー」と何気ない返事をしたが、『卒業』の二文字が突き刺さった。
クノさんは卒業したら、どうするんだろう。
進学も就職もする気はなさそうだし、このまま音楽を奏で続けてくれると信じたい。
ちなみに私も学業は、留年しない程度にはやっている。
きっと成績はクノさんと似たような感じなんだろうな。
そんなことを考えていると、自動ドアが開き、ミハラさんが出てきた。
背負った楽器を揺らし、彼のもとへ駆け寄る。
「あ……」
私たちに気づいたミハラさんは、気まずそうな顔になり、視線を伏せた。