初恋エモ
2
☆
月日は経ち、暖房のぬるい空気が教室にただよう頃。
机と椅子だけが並ぶ、がらんとした教室内で、私は一人もくもくと課題のプリントと格闘していた。
赤点間近だったからちょうどいいや。よし、勉強頑張ろう。
まずは、現代文の問題から。
『下 人の行方は誰も知らない、の表現の効果を答えよ』
これは『羅生門』か。文章を読み、問題文の意図を考える。
しかし、すぐに集中力が切れて脱線してしまう。
えーと。
彼はこの世の不条理を叫ぶ、パンクロッカーになりました。なんつって。
「おい……この時代にエレキギターはないぞ。アホか」
「はっ!」
ふざけた解答をプリントに書いていると、見回りの先生からのツッコミが入った。
びっくりした。いつの間にいたの?
消しゴムでごしごししていると、先生はため息をつき、私を見つめた。
「家のこともあるだろうけど、お前は本当によかったのか? これで」
誰もいない教室を見回しながら、私は答えた。
「はい。しょうがないです」
今、クラスメイトたちは修学旅行中。
きっと沖縄でたくさんの思い出を作っていることだろう。