初恋エモ
☆
「美透ちゃん、おじゃましていい?」
昼休み。一人でお弁当を開けると、扉からミハラさんが顔を出した。
ちなみに昨日は翠さんが来てくれた。
彼女は美容系の専門学校に行くために頑張っているとのこと。
ミハラさんは隣の席に腰をかけ、空っぽの机や椅子を見渡す。
「なんか、不思議な感じするね」
「あはは、私はもう慣れました」
この並びの教室には誰もいないため、廊下も静まりかえっている。
昼休みなのに、上の階からのざわざわ声がかすかに聞こえるだけ。
ミハラさんはパンを食べた後、おにぎりの袋を開けた。
私は小さなお弁当に入ったごはんを一口食べた。
「勉強、どうですか?」
「大変だよ。必死に遅れを取り戻している感じ」
食べながら、彼の近況を聞いたり、課題プリントで分からないところを教えてもらったり、いろいろな話をした。
二人きりの教室。隣同士という近い距離。
こんなドキドキなシチュエーションの中で、今私は彼のイケメン笑顔を独り占めしている状態。
仲良く会話をして、一緒にお昼ご飯を食べて。
もし私がミハラさんと同じ学年だったら、こういう日々を送れたのかな。
……いや無理でしょ。私では彼に釣り合わないって!
なんて、ミハラさんとの甘い青春を妄想していると。
「うわっ!」
彼にじっと見つめられ、驚きのあまり目をカッと見開いてしまった。
ぷっと彼は吹き出し、「なに今の? 可愛い」とつぶやく。
可愛くない可愛くない! そう反論しつつも胸がキューンとした。
相変わらずミハラさんの言葉は凶器だ。