初恋エモ
ただ……、そう前置きして、クノさんは続けた。
「今の俺では実力不足で。もっとバンドでおっきくなるためには、この町よりもおっきいとこに行かなきゃダメだって、改めて実感した」
冷たい風が吹き込み、彼のうねった髪の毛を揺らす。
私はどんな顔をしていたのだろう。
クノさんは私を見つめ、ぷっと吹き出してから。
「お前も高校卒業して、気が向いたら来いよ」
そう言って、雑草だらけの土手を下っていった。
「はい!」と大声で伝え、彼の後ろを追う。
名前の知らない雑草が風に揺れている。
足でささっとかき分けながら、なんとか追いついた。
川の近くの砂利で、彼は意地悪そうな笑顔で私を迎えた。
「ま、ベース下手になってたらスルーするけど」
「そんなことには絶対なりません!」
見てろよ。もっと上手くなってやる。
またクノさんの曲を支えられるように。
「そうだ! クノさん、相談があるんですけど……」
こそこそと内容を彼に伝えると、
何で誰もいねーんだから普通に喋れよ、とツッコミを入れつつも同意してくれた。