初恋エモ
自分が子供みたいなこと言っているのは分かっている。
でも、感情が雪崩のように崩れていく。
「本当は解散なんてしたくなかった! でもクノさんもミハラさんもいなくなっちゃうじゃないですか……どうして私だけ、この街に残らなきゃいけないの?」
「…………」
「クノさん、私を置いていかないでください……」
これを言ったら、絶対に困らせる。
そう思って心の奥に押し込めた想いも、口から吐き出されてしまった。
彼の表情は変わらなかった。
口を結んだまま、無表情で私を見つめている。
どうしてこんなにお願いしているのに、響かないの?
やっぱり私じゃダメなの?
いくら頑張っても私はクノさんには追い付けないの?
祈るように、彼の目を見続ける。
どれくらいこうしていただろう。
クノさんは堪忍したのか、まぶたをいったん閉じてから、ふわりと優しく目を細めた。
急な変化にどくん、と鼓動が高鳴った。
「あー、めんどくせぇ」
口調はダルそうながらも、その表情は温かくて。
ざらついた親指で、頬の涙をぬぐってくれて。
心がとろけるような感覚におちいり、目をそらした。
「……あ」
左手が強く引かれたのは、再び、彼を見つめた瞬間だった。
彼の胸元に埋もれる形になる。
クノさんはそのまま背中に手を回し、ぎゅっと私を包み込む。
耳元で優しく、囁かれた。
「売れてぇな、一緒に」
その言葉と温もりに涙腺が再び緩み、肩を震わせながら泣いた。
泣き止むまで、クノさんは私をずっと抱きしめてくれた。