初恋エモ





初めての給料は真緒のサッカーシューズと練習着、クラブ部費で消えた。

さすがに母も申し訳ないと思ったのか、


「美透はやりたいことないからしょうがないよね。だから、真緒がやりたいって言うことを一緒に叶えてあげようね」


と言って、優しい笑顔を私に向けた。


母や真緒を困らせたくない。

その思いで家の手伝いはしているし、バイトも頑張っている。

私自身も最低限のおこずかいで毎月を過ごしてきた。


母の言う通り、私にはやりたいことがない。


そうなんだけど……。


自分の性格を勝手に決めつけられているみたいで、もやもやした。



寝る前、耳にイヤホンを入れ、スマホで動画をあさった。


好きなバンドから、その関連動画に出てくる、他のバンド。

今年ブレイクしそうなアーティストや、演奏してみた動画。


なぜ私は音楽が好きなのか。

ロックバンドを見ると心がわくわくするのか。


全力で叫んで暴れて、たまりにたまったエネルギーをぶつけているように見えて。

そんな彼らの様子に感情が動かされるから。

自分の心にたまった感情を代わりに吐き出してくれる気がするから。


初めてクノさんを見た時の衝撃はそれに近かった。


あのライブの時、クノさんはきっと本気で音楽をやっていた。

だったら、私も本気でぶつからなきゃ、彼の心を動かすことができないんだ。きっと。

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