初恋エモ
私はペダルを重くしていたものの正体をおろし、側面についたチャックを開けた。
たくさんの銀色で区切られた木目、
ぴんと張られた四本の太い弦、
丸みを帯びたターコイズブルー色のボディ。
「面白くないのに笑って、クソみたいに愛想振りまいて、自分がいなくなるのは嫌なのでこれを買いました!」
「は?」
クノさんは眉間にしわを寄せ、首を傾げた。
上手いことを言ったつもりなのに、彼には伝わらなかったらしい。
「だから、えっと……」としどろもどろになってしまう。
だめだ! 私のそういうところがムカつく、って言われたんだった!
くそ、負けるな私。
中学の頃、衝撃を受けたクノさんのライブを思い出す。
感情をぶちまけるように本気で歌っていた彼の姿を。
息を吸い、思いっきり叫んだ。
「私がこのベースでクノさんの音楽を支えます! 一緒にバンドやりましょう!」
声が半分裏返ったものの、心にずっとまとっていたもやもやが吹っ飛んだ気がした。