初恋エモ
2
☆
土曜日の今日は、バイトは10時から17時まで。
惣菜片手にクノさんの家に行くと、『いる』札が掛けられていた。
ドア越しにギターの音と喋り声が聞こえる。誰かいるのかな。
「おじゃまします」
恐る恐る、ドアを開けた。
中にはギターを弾いてるクノさんと……。
「お、美透ちゃん来た!」
爽やかなイケメン笑顔を向けられ、一瞬ひるむ私。
ジャージ姿のミハラさんもいた。部活帰りかな。
ミハラさんに会釈をしてから、壁際にあるベースのもとへ忍び足で向かう。
「あー気遣わなくていいよ、俺ここで適当に過ごしてるだけだし」
ミハラさんはそう言って、布団に寝っ転がり、スマホをいじり出した。
気まずいながらも、私も部屋の隅に座りベースを鳴らした。
「右手、一定の音で鳴ってない」
「はいっ、意識します!」
「チューニングずれてきた」
「はいっ、直します!」
クノさんは自分でギターをじゃがじゃが弾きながらも、私の音にアドバイスをくれる。
その様子をミハラさんはちらちら横目で見てくる。楽しそうに。
しばらく音を鳴らしていると、クノさんのスマホが震えた。
ギターの音色が止まる。
「あー悪い、これから彼女来るわ」
クノさんは頭をぼりぼりしながら、申し訳なさそうに言った。