初恋エモ
日は長くなり、河川敷はまだ弱い光に包まれていた。
雑草の上でベースを鳴らす私の隣には、なぜかミハラさんがいる。
「だって一人だと危ないでしょ。変な人に絡まれたらどうすんの?」
そう言ってくれた彼は、今、私の隣でスマホをいじっている。
優しさは嬉しいけれど、彼の時間を奪っているようで申し訳なかった。
ひゅっと強い風が通り過ぎ、右手を止めた。
「ミハラさんはドラム、やらないんですか?」
前にも聞いたことをあえて今、尋ねてみた。
彼がドラムを叩いてくれれば、バンドとして活動ができるかもしれないから。
風にさらりと前髪をなびかせ、ミハラさんは私を見つめた。
「あいつ厳しいっしょ。よく美透ちゃんついてけるよなーって思った」
「いやいや、それは私がまだまだだから」
「俺はいっかな~。クノとは友達としてつるむ方がいいし」
ミハラさんはごろんと草むらに寝っ転がった。
私も弦をおさえていた左手から力を抜き、視線を彼に寄せた。
「あいつさー、中学までは野球やってたんだよ。知ってた?」
「あ、そうなんですね」
この前、ガレージで見つけたバットやグローブを思い出す。
それらは相当使い込まれていた感じがあった。