初恋エモ
「あいつ家がめちゃくちゃ厳しいから、親に認められるために相当練習して、そこらの先輩より全然上手くなって。なぜか突然辞めちゃって一時期荒れたけど」
どこか遠い所を見つめているミハラさん。
へぇ、と私は相槌を打ちながらも、初めて知った事実が多すぎて頭が回らなかった。
「ああ見えて、自分にめちゃくちゃ厳しいんだと思う」
「…………」
「で、それを仲間にも求めちゃう。だから俺はあいつとバンドやるのダルい。去年みたいに遊びでやるのはいいけど」
ミハラさんはクノさんの幼なじみだという。
よく知っているからこそ、あえて彼とバンドをやらないのかもしれない。
だけど――
まだクノさんは本気じゃない。きっと。
しょっちゅうギターは弾いているけれど、他のメンバーを探している感じはしないし、新しい彼女もできた。
よく考えたら、私とバンドをやるとは明確に言っていない。
「ごめん、ちょっと喋りすぎたね。美透ちゃん練習続けて」
そうだ。とにかく今は練習だ。
ゲームに熱中したり、時々私のベースで歌ったり、彼は彼で過ごしていたものの、ミハラさんは暗くなるまで私の練習に付き合ってくれた。