初恋エモ
女子たちは手ぐしで髪の毛を整えたり、木陰で鏡のチェックをし出す。
「おい女子、イケメンが見てるからって気合い入れるなよ!」「お前らのことなんて誰も見てねーよ!」
「うるさい! 今どきアスリートも身だしなみちゃんとしてるでしょ?」
クラスの男女が言い合いをする中、スマホをチェックした。
クノさんからラインが届いていた。
『クソみたいなことしてないでさっさとベース練習しにこい』
――その通りだ。
分かってる。自分でもそうしたい。
だけど……。
「あー美透ちゃんサボってる! ボール散らばっちゃったよ~手伝って!」
友達に引っ張られたため、慌ててスマホを隠した。
急用ができた。
そう叫べばいいだけなのに。
「みんな集合ー!」「うちらチームワーク最強じゃね?」
自分一人だけが輪を外れる。
その勇気がないのか、結局練習に付き合ってしまう。
結局、終わった後もみんなダラダラ喋っていて、先帰るね、とようやく言えたのは日が暮れた頃だった。
どんよりした雲の下。
自転車を必死に漕ぎ、クノさんの家へ急いだ。