初恋エモ
「……っ」
ベースが止まる。
すぐにギターの音が止み、冷たい声が飛んてきた。
「全然だめじゃん。こんなん秒でできんだろ。弾きづらいとこどこだよ」
ピッ、ピッ……。
一定のリズム音だけが響く。心を縮ませていく。
「すみません。私が練習不足なだけで」
「さっきのとこ、指届かねーの?」
「すみません」
自分が悪いため、謝ることしかできない。
確かにサビ前のBメロは左手の動きが早くて、音から音へ上手くつなげられない。
それは、もっと練習して弾けるようになればいいだけだ。
クラスの付き合いに嫌々付き合うくらいだったら、もっとベースに触れる時間を増やすべきだった。
視界がゆがみ、頬に冷たいしずくがこぼれる。
クノさんは容赦なかった。
「ベースで音楽支えるっつったのにこのザマじゃん。さっきからすみませんすみませんばっかで、会話にならねーし。謝れば何でも許してもらえるとか思ってんじゃねーよ」
そう言って、ギターをケースに入れて出て行ってしまった。