初恋エモ
「ただいま……」
今日は練習に行かず、まっすぐ家に帰った。
狭い玄関を埋めているピカピカのスパイクとサッカーボールが邪魔で、靴を脱ぐのに手間取った。
「おかえり、今日は早かったね。私明日朝早いから、真緒の弁当作ってくれる?」
「明日? 土曜日じゃん」
「サッカーの練習試合があるんだって。この前、真緒が他の子の弁当と比べて家のは貧乏くさいって凹んでたから、豪華にしてあげてよ」
「うん、わかった」
母は白いパックを顔に張り付けていた。
まるでお化けみたい。私、取りつかれてるみたい。
「ねーちゃん、俺補欠になれたよ! 明日試合出れるかも」
「そっかぁ、よかったね」
真緒の笑顔に対して、反射的に自分も笑顔を作った。
試合見に行けなくてごめんねー、という母の声を背に、自分の部屋へ。
制服を脱ぎ、イヤホンを耳に入れ布団に入り込んだ。