初恋エモ
「ねーねー、どこ見に行く?」
残すは決勝のみ。時間があるため、他の競技を見に行くことになった。
穂波さんたちは楽しそうにメイク直し中。
私が日焼け止めを塗り直している間に、彼女たちの目元や唇にピンク色が重ねられていった。
「美透ちゃんは見たいのある?」
穂波さんからそう問われ、私はいつも通り答えた。
「みんなが行きたいとこでいいよ」と。
軽く答えたつもりだったのに、鏡に映る彼女の表情は曇っていく。
あれ。私、いけないこと言ったかな。
穂波さんはパタン、とチークのケースを閉じ、私をにらみつけた。
「ずっと思ってたんだけど、美透ちゃんって、どこでもいい、なんでもいい、ばっかりだよね」
「え」
「うちらといて面白くないなら、別に無理して一緒にいなくていいよ」
鋭い視線と声が向けられ、体が固まった。
友達二人は驚いた顔を穂波さんに向けた後、心配そうな顔で私を見つめた。そして、
「じゃあサッカーは?」「いいね! ミハラさんいるらしいよ!」
とすぐに案を出してくれた。
「…………」
穂波さんが怒るのも仕方がない。
私が上手く物事を伝えられていないのが原因だから。
結局、私は彼女たちの後ろをついていくだけ。