初恋エモ
黄色い声援が飛び交うサッカー場には、華麗にパスを受け取りシュートを決めるミハラさんがいた。
穂波さんの機嫌も元に戻ったようで、キャーキャー言いながら試合を見ている。
「あーのど乾いた。何か飲みたいなー」
試合が終わり、穂波さんは伸びをしながら私を見つめた。
自分が何をしなければいけないか、すぐに察知した。
「私も何か飲みたいって思ってた。買ってくるよ?」
そう伝え、自動販売機の方へ走った。
これでいいんだ。上手く人間関係を築かなきゃいけないんだから。
しかし、下駄箱横の自動販売機コーナーにて。
「えっと……」
何を飲みたいのか聞くのを忘れた私は、ボタンとボタンの間で指をうろうろさせていた。
お茶かな、スポーツドリンクかな、それとも炭酸?
間違えたら怒られる。でも両方買うのはお金がもったいない。どうしよう……。
「美透ちゃん、迷いすぎ」
後ろから聞こえたのは、よく知っている笑い声。
急いで振り返った。
「ミ、ミハラさん!」
突然、ミハラさんの爽やかな笑顔が視界に飛び込んできた。
ジャージ姿にカラフルなタオルを首に巻いていて、少し髪の毛が湿っている。
さっきまでキャーキャー言われていた彼が目の前にいて、無性にドキドキした。
「試合お疲れさまでした。先どーぞ!」
そう伝え、自動販売機の横にすっと避ける。
なぜか彼は嬉しそうな顔で私を見つめた。
「あれ。もしかして試合見てくれてた?」
「え、あ、はい。ミハラさんサッカーも上手いんですね、すごいです!」
ありがと、と言いながら、ミハラさんは小銭を入れ、スポーツドリンクのボタンを押した。