初恋エモ


どんな男女なのか若干気になり、イヤホンを外した。

階段の手すりに手を置き、そーっと下の様子をのぞき見る。


階段下にいたのは、ウェーブがかった髪型の美人女子と、前髪が重めのマッシュ系髪型の男子……。


「あ!」


その男子の顔がちらりと見えた瞬間、思わず声を出してしまった。

2人の視線が、私へと向けられた。


――やばい! 見つかった!


全身が冷や汗に包まれる。

隠れなきゃ! いやその前に盗み聞きしたこと謝らなきゃ!


ぱくぱくと口を動かしている間に、なぜかその男子はゆっくり階段を上がり私に近づいてくる。


そして――


「あーごめん、待たせた?」


彼は片手を中途半端に掲げ、笑顔を向けてきた。


「え、え、えええ? 私ですか?」


自分を指さし、おろおろしていると、彼は口元に人差し指をあてる。

黙れって合図かな。

直感でそう判断し、口をきゅっと閉じた。


「ねぇその子、誰? 一年?」


もちろん、ウェーブ美人女子の鋭い声に包まれる。

その怒りを帯びたトーンに、ひるみそうになったけれど。


「いいから協力して」


彼に小声でそう言われ、軽くうなずいた。


今の状況を飲みこんだわけではない。

私なんかで協力できるのかな、上手くやらなきゃ、という気持ちになったから。

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