初恋エモ





バイト、家事、バンドと毎日が忙しく、夏休みはあっという間に終わった。

時々、中学時代の友達と遊んだり、家族でおばあちゃんの家に行ったり。


クラスの友達から連絡はなかった。

SNSで楽しそうな写真が回ってきたけれど、見ないようにした。


秋になり、二年生のある女子と仲良くなった。


「家遊びに行ってもずっとギター弾いてるんだよね。全然かまってくれなくてさ~」

「そ、そうなんですか……」


校則違反の茶色いボブヘア、たくさんのピアス穴。

短いスカートに舌っ足らずな話し方。


クノさんの彼女、翠さんだ。


教室では穂波さんが幅を利かせているため、微妙に居心地が悪い。

最近は、理科室奥の階段に集合して、翠さんと一緒にお昼を食べている。


「それより美透ちゃんベース弾けるってすごいね! ライブ絶対行くね!」

「や~全然です。クノさんに怒られてばっかりです」

「え? あいつ、怒ったりするの?」


軽く返したはずなのに、翠さんは目を大きくさせた。


昨日も新曲のベースをほとんど直された。フレーズが難しくなり手が追い付かず更に怒られる。そんなのばっかり。


気になったため、「翠さんといる時はクノさんどんな感じなんですか?」と尋ねてみた。


「二人でいると超優しいよ。だから続いてるのかも」


クノさんとは付き合って3ヶ月。翠さんの歴代の彼氏の中で最長とのこと。

意外とクノさんは翠さんには優しいんだ。

浮気もしていないみたいだし。

練習していても、彼女が来るからって追い出されたこともあったし。

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