初恋エモ
☆
「まじすか。この日のメンツ、結構やばくないすか?」
バンドとしての初ライブが11月に決まった。
「全然いけるよ。だって面白いじゃん。このバンド」
タバコの煙を吐き出し、ニコニコと私たちを見つめる葉山さん。
スクリーミングのコネを使って、人気バンドとの対バンイベントへのブッキングを決めてくれた。
出番は30分間。だいたい5曲はできる。
まだオリジナル曲は2曲しかできていない。ライブまでにあと1曲を完成させ、残りはコピー曲をすることに。
「バンド名はどうするんですか?」
「葉山さんと話してたけど、とりあえず『透明ガール』で」
「おー。……って、えええ?」
それは私の元Twitterアカウント名じゃないですか!
今は『ミト』に直したけど。
「ほら休憩終わるぞー」
慌てる間もなく、クノさんを追ってスタジオに戻った。
バンド『透明ガール』は順調にスタートした。
葉山さんがドラムでビートを引っ張り、クノさんの荒々しいギターと突き抜けた歌声が曲を彩る。
「ベース! もっとドラムに合わせろよ!」
「は、はいぃ」
クノさんはさらにスパルタ度を増している。
私は……ついていくので精一杯だ。
そして、
「今日のスタジオ代は、一人千円ずつで。あとお前、ベースの弦そろそろ変えとけよ」
スタジオ代、ピックやシールドなどの小物代、ベースのメンテナンス代などもろもろ……。
お金もどんどん出て行く。
バンド活動をしていることが母にバレないよう、バイトも頑張らなきゃ。
ちなみにベースを買ったため母の車検代を払えなくなり、少しだけクノさんにお金を借りた。借金も返さなきゃ。とほほ。