初恋エモ
4
☆
「美透ちゃん、体育館行こうー!」
「うん!」
廊下に出ると、肌を突き刺すような寒さ。
寒~っ、と騒ぎながら、クラスの友達と一緒に体育の授業へ向かった。
翠さんは最近学校に来たり、来なかったりを繰り返している。
「美透ちゃん、よかったら一緒に食べよ」
「俺も音楽好きなんだけど、普段どんなの聴くの?」
翠さんがいない日。
いつもの階段は冷えるため、仕方なく教室でお弁当を広げた。
すると、ライブを見に来たクラスの男女が話しかけてくれた。
「美透ちゃん、クノさんとバンドやってるって知らなかったよ。すごーい!」
「ライブかっこよかった。別人みたいだったよ!」
穂波さんと一緒にいる派手女子たちも時々話しかけてくれる。
初ライブを見に来てから、彼女たちの態度は変わった。
逆に、穂波さんがクラスで孤立しているように見えた。
なんとなく気になり、穂波さんを眺めていると派手女子たちが教えてくれた。
「噂で聞いたんだけど、穂波ちゃん……中学の時いじめやってて、超嫌われてたんだって」
私と穂波さんは、同じ中学出身の友達がいない、という共通点があった。
私は他のクラスに同じ中学の人が少しいるけれど、穂波さんには全くいないらしい。
穂波さんの住んでいるエリアは都会で高校も多い。
自転車と電車で2時間くらいかかるし、わざわざ遠いこの高校を選ぶ人はいないだろう。
穂波さんには、新しい環境で高校生活を送らなければいけない事情があったんだ。きっと。
かと言って、彼女に避けられている状態の私には、何もできない。