Ai…

部屋にいると兄が来た



「オレも今日ここで寝よーかなー」

首に掛けたタオルで髪を拭きながら兄が言った



母さんが亡くなってしばらく
兄はオレの部屋のソファーで寝ていた



「あの人、いい人そ~じゃん」

ソファーに座って兄が言った



「…うん」



「23歳だって、オレとあんま変わらない」



23…



「父さんとは、どこで知り合ったかは
なんか聞けなかったけど…」



「初めて会って、よくあんなふうに喋れるね
オレ、今でもなんか‥うまく喋れない…」



「あぁ‥まぁ3人目の母親だしね…
本能なのかも
この人と上手くやってかなきゃって」



「母さんの時もそぉだった?」



「…まだ、オレ3歳だったけど‥
3歳なりに何か感じてたと思う
それから、オマエが産まれて…
オレの母さんじゃなくなるのかな‥って
…でも、オレのことも同じように
可愛がってくれた
育ててくれた
本当に母さんには感謝してる」



「蓮の前のお母さんは、どこにいるの?」



「もぉいない…
育ててくれた人が母親だと思ってるから
生きてたとしても会いたいと思わない
だから、今はあの人が母親でしょ
愛さん…」



本当の母親がまだいるかもしれない兄が
羨ましかったけど
兄は会いたいと思わないと言った


本当の母さんが死んだオレと同じ



兄は、愛さんを
母親として受け入れようとしてた



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