Ai…
兄が話題を映画の話に戻した
楽しそうにふたりで話してた
オレも行けばよかったかな…
急に、好きだ…とか言って
今日、なんかあったのかな…
それも気になった
「オレ、明日帰るわ」
兄が急に言った
「まだ、夏休みでしょ?」
愛さんが言った
「うん…
また帰りたくなったら帰ってくる」
「そっか…
彼女も待ってるもんね
今日買ったプレゼント、きっと喜ぶよ」
プレゼント…?
彼女…?…別れるんじゃないの?
「藍、オレになんか言うことないの?」
兄に言われた
言うこと?
「じゃあ、オレ、先に言うよ…」
兄は愛さんの方を見て言った
先に…?
まさか…
愛さんに
好き…って…?
オレは焦った
「オレ、愛さんのこと、好き…」
オレは兄の前で言ってしまった
愛さんは驚いた顔をしてた
兄がニヤニヤしてた
「で?…だから?」
兄が聞いてきた
え?
「じゃあ、オレも言うけど
オレも好き!
これからもヨロシク、お母さん」
やっとオレは理解した
兄は
オレが愛さんのことを好きなことを知っていた
オレの口から聞きたかったんだと思う
誘導尋問じゃん…
「…ごめん、言わなくて
オレ、愛さんのことが好きで
母親としてじゃなくて…
女性として…愛さんのこと、好きなんだ」
愛さんの前で兄に言った
愛さんは恥ずかしそうだったけど
嬉しそうだった
「早く言えよ〜
オマエが言ったら帰ろうと思ってたのに…
藍、なかなか言わないから‥
もぉ我慢できなかった
オレも彼女待ってるし!」
兄は言った
「…ごめん」
オレは、なんかホッとした
「まったく、中学生のくせに、同棲かよ!
お幸せに…」
そう言って兄は笑った
兄はいつも助けてくれる
それなのに
この夏休み
兄にイライラしたことを
申し訳なく思った